紀元0年がなかったわけ
~無と無限は嫌われていた~
紀元前4世紀 有名なギリシャ哲学者アリストテレスは「無」や「無限」を否定することで『神の存在』を証明しました。
「宇宙は有限で地球はその中心にあり、外側の球を回しているものこそが神である。」という宇宙観です。
また、アリストテレスは「自然は真空を嫌う」と言っています。
この考えは中世ヨーロッパに継承され、宗教の一部となり、「無」について語ることは神の存在に疑問を投げかけることに等しいとされました。
ですから、しばらくの間ヨーロッパにはゼロを使わない時代が続いたわけです。前回 紀元ゼロ年のお話で登場した修道士二人が紀元0年を作らなかったのはこのような背景のためです。
みなさんは小学校でゼロという数を学習しますから、つい最近までゼロという数が存在しなかったことは信じられないのではないでしょうか。
「ゼロ」が全く使われていなかったのかというと実はそうではありません。古代バビロニアや、メキシコのマヤ文明では「ゼロ」が使われていました。ただし、計算などで利用する「ゼロ」ではなく、数を表す「記数法」に「ゼロ」を利用していました。
バビロニアの数は60進法という60をひとまとまりに考えるものでした。1~59までは次のように表記します。社会で学習した楔形(くざびがた)文字です。 次の機会に「ゼロ」の利用をお話しします。