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算数いろいろ 孫子算経

 律令時代からの算術の教科書「孫子算経」から2題 

 「?」

 今有孕婦行年二十九。難九月、未知所生。
 答曰、生男。
 術曰、置四十九、加難月、減行年。所餘、以天除一、地除二、人除三、四時除四、
 五行除五、六律除六、七星除七、八風除八、九州除九。其不盡者、竒則爲男、耦則爲女。

 今29歳の妊婦がいて、妊娠して苦しむこと9か月になる。まだ生まれる子の性別は分からない。
 答 男が生まれる。
 解法
 49を置き、苦しむ月9を加え、行年の29を引く。
 その余り29から、天の1を引き、地の2を引き、人の3を引き、四時の4を引き、五行の5を引き、六律の6を引き、七星の7を引き、八風の8を引き、九州(中国全域の古称)の9を引く。
 その余りが奇数ならば(生まれる子は)男とし、偶数ならば女とする。

 中国の数には男と女の区別がありました。奇数は男、偶数は女でした。
 (49+9-29)-1-2-3-4-5-6-7=1 ここまでしか引けません。余りが1になったので男ということのようです。

 男が生まれるか女が生まれるかを算術で占っています。
 古代、「数が使える者」=「呪術・占星を行うもの」だったということでしょうか。

 次は高校数学の「剰余定理」です。

 今有物、不知其数。三・三数之、剰二。五・五数之、剰三。七・七数之、剰二。
 問、物幾何
 答曰、二十三。
 術曰、『三・三数之、剰二』、置一百四十。『五・五数之、剰三』、置六十三。『七・七数之、剰二』、置三十。并之、得二百三十三。以二百一十減之、即得。凡、三・三数之、剰一、則置七十。五・五数之、剰一、則置二十一。七・七数之、剰一、則置十五。一百六以上、以一百五減之、即得。

 今物が有るが、その数はわからない。3つずつにして物を数えると、2余る。5で割ると、3余る。7で割ると、2余る。物はいくつあるか?
 答 二十三。
 解法
 3で割ると、2余る数として、140と置く。
 5で割ると、3余る数として、63と置く。7で割ると、2余る数として、30と置く。
 これらを足し合わせて、233を得る。これから210を引いて、答えを得る。
 一般に、3つずつにして物を数え、1余ると、その度に70と置く。
 5で割った余りに21をかける。
 7で割った余りに15をかける。
 106以上ならば、105を引くことで、答えを得る。

 *210を引くというのは 3×5×7=105 233からこの105を1回引いて128、また105を引いて23が最小の答えということでです。

 aは5でも 7でも割り切れるが、3で割ると2余る数、
 bは3でも7でも割り切れるが、5で割ると3余る数、
 cは3でも5でも割り切れるが、7で割ると2余る数とします。

 上の解法の140がaに当たり、63がbに当たり、30がcに当たります。

 aの場合、140を素因数分解すると5×7×22です。5×7が入っているので、5でも7でも割り切れます。

 ここでM=a+b+c という数字を作ってみますと、Mを3で割ると2余り、5で割ると3余り、7で割ると2余ります。従って140+63+30=233 は確かに条件を満たす数ですが、そのような数は105おきに無限に存在するということを述べているのが、中国式剰余定理です。

 ガウスが考案した合同式を使うと次のようになります。

 合同式とは137≡5≡2(mod 3) 137と5と2は3で割ると余りが同じになる。というふうに使います。

x ≡ 2 (mod 3) ←xは3で割ると2余る

x ≡ 3 (mod 5) ←xは5で割ると3余る

x ≡ 2 (mod 7) ←xは7で割ると2余る

を同時に満たす整数 x を求める。まず、1番目の式より x = 3m1 + 2 (m1 ∈ Z) と表せる。(Zは整数全体の集合)これを2番目の式に代入し

m1 +2 ≡ 3 (mod 5)

両辺から2 を引くと、

m1 ≡ 1 (mod 5)

この式の両辺に 2 をかけると、(左辺)= 6m1 = 5m1 + m1 m1 (mod 5)

(右辺)= 2 (mod 5)なので

m1 ≡ 2 (mod 5) となる

 したがって、m1 = 5m2 + 2 (m2 ∈ Z) と表せ、これにより x = 15m2 + 8 を得る。更にこれを連立合同式の3番目の式に代入すると、

15m2 + 8 ≡ 2 (mod 7)となる。

この式の両辺から 8 を引き、左辺=15m2 = 14m2 + m2m2 (mod 7)

右辺=-6(mod 7)なので

m2 ≡ −6 (mod 7).

更にこれは、−6 ≡ 1 (mod 7) より

m2 ≡ 1 (mod 7)

と書き直せるので、m2 = 7m3 + 1 (m3 ∈ Z) と表せ、これにより x = 105m3 + 23 を得る。すなわち、

x ≡ 23 (mod 105)となり23が答えになります。

 

ユークリッドの互除法を使って解くこともできます。高校生はぜひ解いてみてください。

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算数いろいろ 律令と算術の教科書

 「養老律令」の「田令」という法律について書きました。この法律を実行するためには農作物の収穫量、戸籍、土地の面積などを記録し計算するために種々の算法が必要になります。

 6世紀以降はそれまでの不確かな時代と違って文献などで明らかになった史実が多く、例えば538年に百済の聖明王から仏典と仏像が送られたということが分かっています。これが仏教伝来の年とされていますが、6世紀以前の九州と朝鮮半島の交流は想像以上に盛んであったと思われるので、すでに仏教やその他の文化は日本に(特に豊前の国に)伝わっていたと考えられます。

 この正史に現れない文化や学問の流入が律令国家の礎を作っていたので、701年に大宝律令が発布できたのだと思います。

 この時代の役人には学問が必要です。ですから養老令では教育制度について決められました。その中に算術についても決められていました。

 このころの教科書は中国の漢の時代に作られた「九章算術」などの書物が使われました。弥生時代の終わりくらいには「数」とともに「算術」も大陸からの渡来人によって伝わっていたのではないでしょうか。

 九章算術の内容は次のようなものです。

 (1)方田:いろいろな形の田の面積の求め方。

 (2)ぞくべい:穀物の計算。交換率の計算。

 (3)衰分さぶん:税金の配分計算

 (4)小広:平方根 立方根。二次式、三次式の解法。

 (5)商功:土木工事に関する問題。

 (6)均輸:人口統計、物価計算。比例 反比例。

 (7)えい不足ふそく:過不足算。(盈とはいっぱいになるという意味)

 (8)方程:多元連立方程式。

 (9)こう:三角法、測量。三平方の定理から始まる。

 この内容を見ると、現在の小学生から高校生までの算数や数学の内容と変わらない内容を学んでいたようです。但し、法則などという学問的なことよりも実用的な内容です。

 実際の問題をいくつかあげてみます。

 「孫子算経」という書物からまず「鶴亀算」です。

鶴亀算(雉と兎)
今有雉兎同籠、上有三十五頭、下有九十四足、問雉兎各幾何
答曰 雉二十三 兎一十二
術曰 上置頭 下置足、半其足 以頭除足、以足

雉と兎が同じ籠の中にいる。頭の数は35である。足の数は94である。雉と兎はそれぞれ何匹いるか
答 雉23 兎12
解法 頭の数と足の数をそれぞれ算盤の上と下に置く
足の数を半分にし、その数から頭の数を引く(→兎の数)
頭の数から兎の数を引く(→雉の数)

最小公倍数
今有三女、長女五日一歸、中女四日一歸、少女三日一歸。
問、三女幾何日相會。
答曰、六十日。
術曰、置長女五日・中女四日・少女三日、於右方。各列一算於左方。維乘之、各得所到數。長女十二到、中女十五到、少女二十到。又各以歸 日乘到數、即得。

娘が3人いて仕事に出ている。長女は5日に1回帰り、中女は4日に1回帰り、少女は3日に1回帰る。
問 3人は何日ごとに会うか。
答 60日
解法 長女5日・中女4日・少女3日を右側に置く。各々の一算を左側に並べる。これらを維乗すれば、各々の到数、長女12到、中女15到、少女20到が得られる。また各々の帰る日を到数に掛ければ、答が得られる。

1×4×3
1×5×3
1×5×4
12
15
20

 この問題は5,4,3が互いに素なのでこの方法で答えがでますが、そうでない場合は間違った答えが出ます。

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算数いろいろ 律令と口分田

↑万葉集西本願寺 貧窮問答歌(山上憶良)

 大宝律令は701年に制定された日本の法律です。

 律は刑法、令はそれ以外の法律のことです。大宝律令は日本で初めて律と令がそろった法律です。これ以前にも「近江令」や「飛鳥(あすか)(きよ)御原令(みはらりょう)」という法律がありましたが、中央集権国家の国造りの集大成としてこの「大宝律令」が制定されました。その後改正されて「養老律令」が制定されるのが757年です。この「養老律令」はほとんど形ばかりのものになりますが、実際は明治維新まで廃止されることなく存続しました。

 この「養老律令」には田令という法律があり、口分田についての決まりがあります。

 口分田といえば646年の「班田収授法(はんでんしゅうじゅほう)」を浮かべる人も多いと思いますが、本格的に成立したのは「飛鳥浄御原令」からです。口分田をきちんと民に配分するには、きちんとした戸籍が必要だったので、法律ができてから戸籍を作るまでに時間がかかったわけです。6年に1度戸籍調査が行われ(今でいう国勢調査)、それによって班田収授が行われました。

 養老律令の田令では次のように決められています。

・良民男子は2段、良民女子は男の3分の2、5歳以下には支給しない。

・家人・私有の奴婢は良民男女の3分の1 *奴は男の召使、婢は女の召使

・兵士に取られた男分は無税になるので計算に加えない

 さて、この「段」とはどれくらいの広さでしょう。現在では「反」と書いていますが、土地の面積の単位です。

1()(坪)=3.305㎡=畳2畳分の広さ

1(たん)(反)=太閤検地までは360歩=1,188㎡/太閤検地後は300歩=992㎡

 古代では米1(こく)の収穫があげられる田の面積を1段としていました。米1石とはだいたい大人一人の1年間分のお米の量でした。1升ビン100本分です。重さでいうと150㎏です。

 太閤検地で1段の広さが360歩から300歩に変わったのは、コメの収穫量が上がったので、300歩でも1石の収穫を上げることができるようになったからという説と、年貢の増収のためともいわれています。

 話を戻しますが、良民は2年分のお米がとれる田を与えられ、私有の召使は半年分くらいのお米がとれる田を与えられたということになります。収穫は土地によって違ったでしょうし、天候にも左右されますが、古代の法律も、定義された算出方法を使って成り立っていたということですね。

 ちなみに長浜市には「口分田町」、東京には「五反田」、嘉麻市には「一丁五反」という地名があります。

 日本史の問題をひとつ 1段=360歩として計算します。

A 戸主39歳
B 戸主の父65歳
C 戸主の母64歳
D 戸主の妻37歳
E 長男17歳
F 長女15歳
G 次男10歳
H 次女5歳

【1】この戸の口分田の合計は何段?

【2】この戸の租の総額は?
(1束=10把/租は田1段(公定収穫量72束)につき2束2把とします)*租(田租)は田の面積に応じて課される土地税のこと

【3】この戸の庸の総額(麻布二丈6尺)歳役の総日数

【4】この戸の調の総額(麻布二丈6尺を選択)

解答

A(正丁)、B(次丁/老丁)、C(老女)、D(丁女)、E(中男/少丁)、F(小女)、G(小子)、H(小女)

【1】ABEGは各2段。CDFは各1段と120歩。

 2(段)×4+(1段と120歩)×3=8+4=12段

【2】租の総額(1束=10把)

 租は田1段(公定収穫量72束)につき2束2把。

 (2束2把)×12(段)=24束24把=26束2把

【3】庸の総額、歳役の総日数

 歳役10日の代わりに出す庸(布)は、正丁が2丈6尺、次丁は正丁の2分の1。ABが対象。

 庸(布):A(麻布2丈6尺)+B(1丈3尺)=3丈9尺。

 歳役ならば:正丁(A)10日、次丁(B)5日。

【4】調の総額(麻布2丈6尺)

 正丁・次丁(正丁の2分の1)・中男(正丁の4分の1)。ABEが対象。

 A(2丈6尺)+B(1丈3尺)+E(6尺5寸)=4丈5尺5寸

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算数いろいろ 素数ゼミ

素数ゼミ

 今年はニューヨークなどでセミが大発生してニュースになっています。このセミは17年ごとに大発生するので、周期ゼミ、特に素数ゼミと呼ばれています。アメリカ大陸の素数ゼミはもう1種類13年周期で発生するセミがいます。

 なぜこんな長い間地中に潜って、きっちり13年や17年ごとに地上に出てくるのか不思議ですね。この不思議について1996年、日本の吉村仁さんが論文を発表し、2005年に「素数ゼミの謎」という本を出版しています。
今年の「日経サイエンス8月号」でもニュース解説で取り上げられています。

 素数ゼミはアメリカ全土で一斉に羽化するわけではなく、特定の地域で周期的に羽化します。発生する年が同じものはブルードという単位で区別されます。今年はワシントンやシンシナティで現れるグループが羽化する年です。アメリカのブルードは17年ゼミでは13種類、13年ゼミでは3種類です。今年はニューヨークという都会で発生する年なので大ニュースとなっていますが、毎年どこかの地域で発生しています。

 吉村先生は、「なぜ17年もの間地中で過ごしているのか」という疑問について次のように説明されています。

① セミの幼虫は天敵が少ない地中で成長するという道を選択したものの、地中の根の導管からはあまり養分を吸収することができないため、ゆっくり成長する。
*導管とは地中の水とそれに溶けている養分を吸収する管なので、養分は多くない。(中学で学習します)

② セミは2億年ほど前から地球上にいた。それから何度かの氷河時代を経験し絶滅の危機を迎えるが、氷河時代でも比較的気温が下がらなかった「レフュージア」という避難所のようないくつかの場所で生き延びることができた。そのため、交尾相手を見つけるために、一定の地域に定住するようになった

③ 羽化の時期がちがってくると、多数のセミが羽化する年でないと交尾相手が見つからないため、多数派の年のセミだけが生き延びるようになった。このため、十分な大きさになって羽化することよりもきちんとした周期で一斉に羽化することになった。
*一斉に孵化したり、群れを作ったりして天敵から自分が捕食される可能性を低くしようとすることを希釈効果といいます。

 以上が「長い年月をかけて成長する」「特定の地域で繁殖する」「周期的に羽化する」という疑問の答えとなっています。

 ではなぜ13年と17年なのかという疑問についてですが、もともと12年ゼミ、や18年ゼミなどいろいろな周期で羽化するセミがいたのだそうです。違う周期のセミの羽化が重なると、交雑が起きます。交雑すると、もとの周期とちがうセミが生まれます。12年ゼミと18年ゼミがが交雑して16年ゼミが生まれたとすると、羽化したときに交尾相手がいないので(その地域には特定の周期のセミしかいない)、交尾することなく死んでしまいます。つまり、異なる周期のセミとなるべく同時に羽化しないほうがいいわけです。

 そこで素数が登場。
 素数はほかの数との最小公倍数がとても大きな数になるので、同じ年に羽化する周期が大きくなります。
たとえば、15年周期と18年周期のセミが同時に羽化する周期は90年ですが、17年ゼミと18年ゼミでは306年となります。

 ではもっと大きな素数のほうがいいのではないかと思いますが、残念ながら土の中で過ごすのは18年が限度なのだそうです。

 こんなふうにアメリカ大陸のセミは氷河時代を生き延び、だんだんと素数ゼミだけが生き残ってきたということです。 日本のセミは卵が産み付けられてから約1年かけて孵化し、土の中へもぐって木の根から栄養を取り込みながら数年で羽化します。
 日本のセミの幼虫期はツクツクホウシが1~2年アブラゼミ、ミンミンゼミ、ミイミイゼミが2~4年、クマゼミは2~5年です。孵化するまでの期間がまちまちなのは、栄養が十分ならすぐに成虫となり、栄養が少なければゆっくりと成長するため孵化するまでに時間がかかるからです。成虫になってからは1か月ほど生きるそうです。
 *2019年には岡山県笠岡市の笠岡高校3年生植松蒼さんが独自の調査手法によりアブラゼミが最長32日間、ツクツクボウシが最長26日間、クマゼミが最長15日間生存したことを確認し発表して話題となりました。頑張ってるね、日本の高校生。

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算数いろいろ 日本の数詞②

律令と口分田と計算

 大宝律令は701年に制定された日本の法律です。

 律は刑法、令はそれ以外の法律のことです。大宝律令は日本で初めて律と令がそろった法律です。これ以前にも「近江令」や「飛鳥(あすか)(きよ)御原令(みはらりょう)」という法律がありましたが、中央集権国家の国造りの集大成としてこの「大宝律令」が制定されました。その後改正されて「養老律令」が制定されるのが757年です。この「養老律令」はほとんど形ばかりのものになりますが、実際は明治維新まで廃止されることなく存続しました。

 この「養老律令」には田令という法律があり、口分田についての決まりがあります。

 口分田といえば646年の「班田収授法(はんでんしゅうじゅほう)」を浮かべる人も多いと思いますが、本格的に成立したのは「飛鳥浄御原令」からです。口分田をきちんと民に配分するには、きちんとした戸籍が必要だったからです。6年に1度戸籍調査が行われ(今でいう国勢調査)、それによって班田収授が行われました。

 養老律令の田令では次のように決められています。

・良民男子は2段、良民女子は男の3分の2、5歳以下には支給しない。

・家人・私有の奴婢は良民男女の3分の1 *奴は男の召使、婢は女の召使

・兵士に取られた男分は無税になるので計算に加えない

 さて、この「段」とはどれくらいの広さでしょう。現在では「反」と書いていますが、土地の面積の単位です。

 1()(坪)=3.305㎡=畳2畳分の広さ

 1(たん)(反)=360歩=1,188㎡ テニスコート6面分くらいの広さです。

 古代では米1(こく)の収穫があげられる田の面積を1段としていました。米1石とはだいたい大人一人が1年間に食べるお米の量でした。1升ビン100本分です。重さでいうと150㎏です。

  話を戻しますが、良民は2年分のお米がとれる田を与えられ、私有の召使は半年分くらいのお米がとれる田を与えられたということになります。収穫は土地によって違ったでしょうし、天候にも左右されますが、古代の法律も、定義された算出方法を利用することで成り立っていたということです。

 「法律や政治」と「数」は関係ないように思えますが、国をまとめるためには、まず戸籍を調査し、きちんと計算したうえで運営しなければいけないわけで、日本では弥生時代の終わり頃から人、作物、土地などの数量の計算を行っていたということがよくわかりました。これもまた、中国の政治経済を学びながら行ったことです。

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  算数いろいろ 素数ゼミ ☛

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算数いろいろ 日本の数詞①

数字の歴史

数を数えるときどんなふうに数えますか?

「いち、に、さん・・・」ですか?それとも「ひとつ、ふたつ、みっつ・・・」ですか?

「いち、に、さん・・・」は漢字の読みですから漢字が伝わった時から用いられています。

「ひとつ、ふたつ、みっつ・・・」はいつから使われているのでしょう。

実はよくわからないそうです。

現代数詞と古代数詞を並べてみました。

イチ
サン
いつ
ロク
なな シチ
ハチ
ここの
10 とお () ジュウ
11 とおあまりひとつ  
20 はた  
30  
40  
50  
60  
70 なな  
80  
90 ここの  
100 もも ()  
130 ももあまりみ  
200 ふた  
500  
970 ここのあまりなな  
1000  
10000 よろず  

10(とお)は30以降は「」といいます。同じように100(もも)は200以降は「」といいます。

日本の古代の数は十進法で10より大きい数を表すことはあまりなかったようです。だから、11は「とおあまりひとつ」(10+1)のようにあらわしたようです。

日本の数詞についてもう少し考えてみたいと思っています。

ところで皆さんは数を数えるとき「イチ、ニ、サン、シ、ゴ、ロク、シチ、ハチ、キュウ、ジュウ」と数えますか?

ではジュウからカウントダウンするときはどうですか?

「ジュウ、キュウ、ハチ、なな、ロク、ゴ、よん、サン、ニ、イチ」じゃないですか?

7と4は古代数詞が混ざっていますね。これは多分言いやすいからだと思いますが、このように、二種類の数詞を使っているのは、日本と韓国だけのようです。

もともとあった古代の数詞に中国から漢字が伝わったことで、両方をうまく使うようになったようです。日本人の柔軟性がうかがい知れます。

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算数いろいろ 完全数

 世の中には いろいろ面白いことがたくさんあります。
 数字にもいろいろ面白い数字があります。

完全数(かんぜんすう)

 その数自身を除く約数の和が、その数自身と等しい自然数のこと。
 あのピタゴラスが名付けました。
 紀元前3世紀 ユークリッドは「2n − 1 が素数ならば、2n−1(2n − 1) は完全数である。」ことを証明しました。
 そのころ日本は弥生時代。

  の約数は1、2、3、6の4つで、6自身を除く残りの3つを加えると
 1+2+3=6
 しかも 1、2、3と続いてます。

 28の約数は1、2、4、7、14、28の6つで、28自身を除く5つを加えると
 1+2+4+7+14=28となります。
 しかも 1+2+3+4+5+6+7=28
 1~7まで足したら28

 その次の完全数は496
 496の約数は1、2、4、8、16、31、62、124、248、496
 1+2+4+8+16+31+62+124+248=496となります。
 しかも
 1+2+3+4+5+6+7+8+9+10+11+12+13+14+15+16+17+18+19+20+21+22+23+24+25+26+27+28+29+30+31=496
 1~31まで足したら496になります。

 「だから 何?」って突っ込まないでください。

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 聖書では
 ユダヤ教・キリスト教の聖典である旧約聖書『創世記』の冒頭には、以下のような天地の創造が描かれています。

 一日目 暗闇がある中、神はを作り、昼と夜が出来た。
 二日目 神は空(天)をつくった。
 三日目 神は大地を作り、海が生まれ、地に植物をはえさせた。
 四日目 神は太陽をつくった。
 五日目 神はをつくった。
 六日目 神は家畜をつくり、神に似せたをつくった。
 七日目 神は休んだ

 『何故神様は6日間で天地を創造したかというと、「」という数字が最初の完全数だからだ。』と、聖アウグスティヌス(? – 604年)が言ったそうです。

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 「八日目」という映画があります。
 ジャコ・ヴァン・ドルマル監督が1996年に製作したフランス映画です。「トト・ザ・ヒーロー」の監督です。
 何が八日目なのかな?
 聖書では神様は6日で天地を創造し、7日目はお休みなった。その次の日、つまり8日目には何をお作りになったのか……。

 映画の「八日目」では
 冒頭、ダウン症のジョルジュが自分自身の出生を描写するところから始まります。
「この世の初めは無だった。あったのは音楽だけ。
 一日目、神さまは太陽をつくった。
 二日目、神さまはをつくった。
 三日目、神さまはレコードをつくった。
 四日目、神さまはテレビをつくった。
 五日目、神さまはをつくった。
 六日目、神さまは人間をつくった。
 日曜日、神さまは休息なさった。ちょうど七日目だった。
 そして八日目……」 ジョルジュは生まれた

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 月の公転周期が28日なのは「28」という数字が二番目の完全数だからとも。
 正確に言うと 月の公転周期と自転周期はほぼ同じ27.3日で、満ち欠けは29.5日です。
 何故公転周期と満ち欠けの周期が違うかというと、地球がじっとしていないからです。この話は また おまけをつけて別の機会に。

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 ついでですが、阪神の江夏の背番号は28です。
 中学生の頃、江夏の実家が近くて、江夏のお母さんをよく見かけました。
 背番号のことに気がついて一人で喜んでいたのですが、「博士の愛した数式」(小川 洋子 著)に書かれていました。

 2013年2月現在、完全数は48個発見されています。
 *2020年9月現在51個になりました。
 *2021年5月現在51個のままです。
 「偶数の完全数は無数に存在するか?」、「奇数の完全数は存在するか?」という問題は未解決です。

 48個目は 2の43112608乗×(2の43112609乗-1)(2008年)
 51個目は 2の82589932乗×(2の82589933乗-1)
 そしてその51個はすべて偶数です。
 「奇数の完全数が存在するか?」「偶数の完全数は無数に存在するか?」は未解決です。 
 さらに一の位はすべて「」か「」です。

 「だから 何の役に立つの?」って言われそうですね。

☚ 算数いろいろ なるべく少ない回数で明かりをつけるには?
  算数いろいろ 日本の数詞① ☛

*2020年9月24日改
*2021年5月7日改

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算数いろいろ なるべく少ない回数で明かりをつけるには?

 あるところに、ある部屋がありました。この部屋には電灯が1つありますが、スイッチは4つあります。

 4つのスイッチのうちどれか2つがON(入)、残りの2つがOFF(切)になっている時だけ、電灯に明かりがつく仕組みになっています。

 この部屋に入ろうとして真っ暗だったら、あなたはスイッチを探して明かりをつけますよね。

 でも、真っ暗ですから4つのスイッチのうちいくつのスイッチがONになっているかわかりません。

 なるべく少ない回数で明かりをつけるには、どうしたらいいか考えてみましょう。

 まず、今この部屋は真っ暗なのでスイッチは

 ① ON ON ON ON

 ② ON ON ON OFF

 ③ ON OFF OFF OFF

 ④ OFF OFF OFF OFF

のいずれかの状態です。

 ここで想像して欲しいのですが、あなたの財布の中の硬貨を机の上にばらまいて、表になっている硬貨の数を数えたとします。奇数枚か偶数枚かのどちらかですね。

 そこでその硬貨のうち2枚を裏表ひっくり返すという操作(A)を行って下さい。表になっている硬貨の枚数は、初めに偶数枚だったらやっぱり偶数枚、初めに奇数枚だったらやっぱり奇数枚です。

 じゃあ、硬貨のうち1枚だけ裏表をひっくり返すという操作(B)を行うと、表になっている硬貨の枚数は、初めに偶数枚だったら逆に奇数枚、初めに奇数枚だったら逆に偶数枚です。

 操作(A)は何回繰り返しても元と同じで、操作(B)は何回繰り返しても元と逆になります。

 そこで部屋の明かりをつけることを考えます。

 2個のスイッチのON/OFFを切り替えたとします。

 その時明かりがつけば初めの状態は①か②です。明かりがついたのでこれで終了です。

 2個のスイッチのON/OFFを切り替えても

 その時明かりがつかなければ、②か③の状態になっています。

 つまり②→②または③、 ③→②または③となっているわけです。

 じゃあ、次に1つだけスイッチのON OFFを切り替えて見ましょう。

 ②→明かりがつく または①

 ③→明かりがつく または④ となります。これで明かりがつけば終了です。

 これでも明かりがつかないときは、①か④の状態なので2個のスイッチのON/OFFを切り替えれば必ず明かりがつきます。

 まとめると、

2個のスイッチを同時に切り替える
つかない
1個のスイッチを切り替える
つかない
2個のスイッチを同時に切り替える

  ということで、最大3回の操作を行えば必ず明かりがつきます。

 以上は30年位前に読んだ雑誌にあった問題を思い出して書いてみました。

 挿絵もその時の挿絵を思い出しながら書いてみました。

 その時は面白いと思いながら読んだので、よく覚えています。

 今思い出しても面白いと思いますが、どうでしょう?

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算数いろいろ エジプト式分数②

 エジプト式分数(えじぷとしきぶんすう)が面白かったので、このエジプト式分数に関係する問題をひとつ。

 クイズの本によく載っている問題なので知っている人も多いかもしれません。

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 アラビアの男の人が、所有している11頭の馬を3人の息子に譲ることにしました。そこで、「11頭の1/2を一番目の息子に、1/4を真ん中の息子に、1/6を末の息子に譲る」という遺言書を書きました。

 まさか 馬を切り刻むわけにはいきませんから、一同 頭を抱えてしまいました。

 そこへ、親戚のおじさんがやってきて あっさり解決してくれました。どうやって?

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 1/2 + 1/4 + 1/6 = 11/12 なので、分母が2、4、6なら12頭なら良かったんですよね。

 でも12頭だと分けたあとに1頭残ってしまいます。

 そこでおじさんは自分の馬を1頭引いてきて、全部で12頭にし、一番目の息子に6頭、真ん中の息子に3頭、末の息子に2頭を与え、残った自分の馬1頭を引いて帰ったそうです。

 3人の息子のお父さんは、本当はこう言いたかったと解釈しておじさんが解決したのだと思います。

 「11頭の馬を一番目の息子はまん中の息子の2倍、末の息子の3倍になるように分けなさい。」

 でも、本当は遺言通りに分けたわけではないので、おじさんは間違っていますが、争いごとが起きない解決方法としては十分正解です。

 馬の数を増やして同じような問題を作るとすると、例えば

 41頭の馬を 1/2と 1/3と 1/7に分ける場合、おじさんはやっぱり1頭の馬を貸してあげれば解決します。

 このように同じ問題を作ることができますが、実はおじさんから1頭借りて3人に分ける問題は全部で7パターンしかできません。

 しかも、一番目の息子は必ず1/2を譲り受けることになります。

 暇なときに考えてみると面白いかもしれません。

 面白いなあと思ったら、どんどん続けてください。

 きっと「ヒマだなあ」つぶやくような大人にはならないと思いますよ。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 高校生の皆さんにはちょっとだけおまけ

 ディオファンタスの方程式のひとつ n/(n+1) = 1/a + 1/b + 1/cの解7通りが答えです。

 但しabcは相異なる正の整数で、abより小さく、bcより小さく、n+1はabc の最小公倍数であるようなものです。

 このように式で書くとみなさん嫌になります。

 私も嫌になりますが、遺産分けの問題だと思えば考えてみようかなと思います。

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算数いろいろ エジプト式分数

 昔々の中国の人は、現在の私たちが行っている分数の計算と同じような、分数の加減乗除の計算の規則を持っていました。

 中国では分子が分母より小さな分数(真分数)を多く使っていました。

 ところが、古代エジプトでは分子が1の分数(単位分数)だけを使って、いろいろな分数を表していました。

 これをエジプト式分数(エジプトしきぶんすう)といいます。

 例えば、

 5/6をあらわしたい時は、1/2 + 1/3

 2/5をあらわしたい時は、1/3 + 1/15 といった感じです。

 計算をする上では断然中国の分数のほうが有利です。

 なんでこんな風に分数を表したのかはよくわかりませんが、ヨーロッパでは17世紀まで使われていたそうです。

 また、現在の分数の計算はインドの数学者のおかげですが、18世紀まで余り普及しなかったそうです。

 「エジプト式分数を長く使用したせいで、数学の発展を遅らせた」という人もいました。 

 でも、面白いこともあります。 例えば 5/6について問題を作ってみます。

 「5本のフランスパンがあります。これを6人の子供に分けるには、どんなふうに分けたらいいでしょう?」

 エジプト式分数を使うとこうなります。

 「まず、3本のフランスパンを半分に切ります。1/2本が6個できました。」

 「次に残りの2本を3等分に切ります。1/3本が6個できました。」

 「はじめの 1/2本と次の1/3本を一つずつ6人に配れば完了です。」

 私は自分で問題を考えて、自分で解いてみて、「凄いなあ」と思いました。

 こういうのを自画自賛といいます。

 が、エジプト式分数の知識が少しあったのでできたことです。

 やっぱり凄いのは古代エジプト人ですね。

☚ 算数いろいろ ゼロについて⑤
  算数いろいろ エジプト式分数② ☛